稲川淳二さんの口調で怖い話を生成します。 暑い夏のネタにどうぞ。

「あれは、ある夏の夜の出来事でしたねぇ…

友人の鈴木君が田舎に引っ越したばかりだってことで、新しい家に招待してくれたんですよ。その鈴木君の家と言えば、もう築100年以上も経っている古い民家でねぇ、周りは一面の田んぼですよ。夜になると、まるで時間が止まったかのように静かで、薄気味悪いくらいなんです。そんな夜に…あの出来事が起きたんですよ。

深夜2時頃だったでしょうかねぇ、僕たちは布団に入っていたんですけど、突然、妙な音が聞こえてきたんです。『カラ…カラ…』と古い戸が軋むような音。『あぁ、古い家だから風でも入ったのだろう』なんて軽く考えていたんです。ところが、その音が次第に大きくなって…『カラ…カラ…』

鈴木君も僕も、そんな音を無視できるわけがないですからね。『今の音、聞こえたか？』と鈴木君が聞くと、僕も『ああ、聞こえたよ』と答えました。それで二人で音のする方へ恐る恐る足を運んだんです。

音の正体は、どうやら奥の廊下から聞こえてくるんです。そこでね、僕たちは懐中電灯を持って、廊下の奥へと進んだんです。そして、その先には一つの部屋がありました。その部屋の襖が、飛び跳ねるような音を立てていたんです。『カラ…カラ…』

鈴木君が『開けてみよう』と言って、僕も承諾しました。襖を開けると、なんと中には何もない…しかし、窓ガラスがしこたま曇っていました。曇りガラスの向こうに、薄っすらと手の形が見えたんです。普通であれば、誰かが窓を触った後だと考えるところでしょうが、その手形…まるで外からこちらを見ているように見えたんです。それに気づいた瞬間、全身に鳥肌が立ちました。

鈴木君が『もう帰ろう…』と弱々しく言ったところ、その手形がゆっくりと動き始めたんですよ。『キィ…キィ…』と音がして、手形の数が増えていく。まるで沢山の手が窓を叩き始めたかのように。

僕たちはもうそれ以上、その場にいられなかったんです。慌てて部屋を出て、二階に戻ったんですが、心臓がバクバクして…しばらく寝れませんでしたよ。

その後、鈴木君のおばあちゃんが教えてくれたんですが、その部屋はかつて、この家の持ち主の娘さんが住んでいてね、ある夜…その娘さんは突然姿を消したっていうんですよ。なんでも、彼女が戻ってくるのを待ちわびた家族が、毎晩窓を見つめていたと言いますが…その噂によると幽霊が…そう、今でも彼女の帰りを待っているという話が…。

まあ、その後、鈴木君もその部屋には二度と入らなかったんですよね。あの手形の恐怖…今でも時々夢に出てきて、僕を震え上がらせるんです。いやぁ、本当に怖いことですよ…」